初期研修の目標は初期研修を終了することです

研修医向け

 インデックス医です。

 初期研修医1年目の方は、社会人になり約2ヶ月が経過しましたね。本日は、人的資本という視点から、初期研修の最大の目標について考えてみます。

 人的資本というのを簡単に説明すると、私達自身が持つ資格や経験、スキルというのを金融資本(預金、株式など)のように、資本として考えようということです。
 医学部を卒業し、医師国家試験に合格する、その時点である程度、人的資本が高まったと捉えることができますし、実際、医師免許さえ持っていれば、生活に困るようなことはないでしょう。
 ただ、この医師免許は初期研修を終えていないとその力を十分に発揮してくれません。保険診療ができないからですね。
 そういう視点で考えると、初期研修の至上命題は、デキレジになることではなく、初期研修を終えることです。その先に医師としてのキャリアがあります。

 初期研修開始直後は、医学的な判断の部分より業務的なこと(電子カルテの扱い方など)に時間を取られてしまったと思います。
 また、日常生活の時間の大半を仕事に追われ、人間関係も大きく変わる。
 そんな生活の大きな変化と、人の命に関わる医療という仕事に携わること、これが大きなストレスにならないはずがありません。

 どこかで聞いたことがあるかもしれませんが、初期研修医の約3割は抑うつ症状を呈したり、燃え尽き症候群になるというデータがあります。ドロップアウトする人も約200人程度いるというデータすらあるほどです。

 医学部6年間、そして医師国家試験を合格し、やっと医師として働くことができるのに、初期研修を終えられなかったがために保険診療に携わることができなくなるのは、非常にもったいないことです。
 かくいう私も、初期研修を数週間ではありますが、中断した時期があり、そのままドロップ・アウトしていたら、どうなっていたかわかりません。
 そのときに感じたこと、考えたことを少しでも共有して、同じように苦しむ人が少しでも少なくなれば、と思い書いています。

結論)初期研修の目標は初期研修を終えること

 タイトルにもしましたが、私が思う初期研修の唯一最大の目標は、
初期研修を終えること
です。

 本日の簡単なまとめです。

 ①医師は、人の命に関わることもあり非常にストレスの高い、うつになりやすい職業です。
 その中でも、初期研修医というのは、1−2ヶ月ごとに環境が変化するという意味でさらにストレスにさらされやすい立場にいます。

 ②しかし、それを乗り越えて初期研修さえ終えれば、医師としてさまざまな働き方がある中で、自分にあった働き方、病院を選ぶことができます。

 ③休暇の日数や、初期研修の中断可能な日数などを知っておくだけでも、いざという時に役立つ

 以下、それぞれを詳しく見ていきます。

研修医が鬱になりやすい理由

 初期研修医が鬱になりやすい理由はいくつかあります。

 ・そもそも受験という競争を勝ち抜き、医学部に入学するような人は、根本的に真面目、責任感が強い、努力家が多いです。
 周りが医学部、医師ばかりで過ごしていると感じにくくなるかもしれませんが、これは集団の特徴としては非常に大きな部分です。

 医療・福祉の分野はストレスが高い
 医療・福祉は、人の人生に大きな影響を与える、それを肌で感じやすいという点で、非常にストレスが高いです。

 ・自分の努力の成果が見えにくい
 これは、医療にテストの答案のような明確な答えが存在しないことが理由の一つになります。努力の成果が仕事に現れないことは、モチベーションを保つことを難しくします。

 裁量権が小さい
 初期研修医は、救急外来を除けば、自身で治療方針を決定するというようなことがあまりできません。基本的には指導医の指導のもと、診療にあたるからです。
 この裁量権の小ささは、自分がただ、言われたことをこなせばいい駒のように感じてしまい、人によっては非常にストレスになります。

 初期研修医の求められている役割は病院や病棟に全く違う
 初期研修医は、病院の一戦力として救急外来などでばりばり働く病院や、お客様のような状態で、見学に近いような病院など、求められるものが全く違うため、それが自分の意識とマッチしなければ、非常に大きなストレスになります。

 想像より雑務が多い
 これは、初期研修医に限らず新社会人全般に言えることでしょう。仕事における理想と現実のギャップという意味では、この雑務の多さは

 1−3ヶ月程度でローテート科が変わる→職場が変わるようなもの
 ローテート科が変わるというのは、職場が変わるくらいの大きな変化です。
 同じ医療とはいえど、科によって全く生活リズムが違い、必要な知識や技術も大きく変わってきます。自分に合わない科というのは少なからずあるでしょうし、それが必修科であればなおさらストレスは高くなります。

 ・長時間労働
 日本人の平均労働時間は180時間/月程度らしいです。それに対し初期研修医は、70時間台/週つまり、280時間/月と、労働時間も長いことがわかります。

うつの症状

 うつの症状というのは、
 食欲低下
 睡眠障害
 作業効率低下
 意欲の低下

 などが挙げられます。

 精神科医ではないので詳しいことは言えませんが、周りから見て明らかに普段と違うような時も、それを本人が認識できない、というのは多々あるようです。
 周りがそれに気づき、何かできればいいですが、自分なりにもストレスを解消法など持っておくといいかもしれません。

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初期研修を終えるための意識と知識

 何度も言ってきましたが、目標は初期研修を終えることだと認識しましょう。これは医師免許を活用するために重要なことです。

 自分は医師に向いていない、と思うようなことがあってもそれは、その病院やその科に合っていないだけという可能性は大いにあります。
 初期研修さえ終えれば、どこで働いてもいいので、初期研修だけで判断するのはもったいないです。
 この記事を見ていただければわかると思いますが、初期研修のあとの進路は思ったより選択肢は多いです。

初期研修終了後の進路を思いつく限り書き出してみる

 初期研修は90日の中断までであればそれを含めた2年間で終了することができます。
 有給休暇も最低5日は取得することが、義務として決まっていますし、1年目でも10日の有給休暇があり、それをすべて取得することができる初期研修医も多いと思います。
 何か自分に異変を感じたら、このあたりの制度を活用して、迷わず休んで良いでしょう。
 そうならなくても、リフレッシュのために休暇を適度にとることも重要です。
 研修の中断の要件や、有給については全体のルールとして定められていますが、他にも福利厚生の部分は病院によって様々ですので、それを知っておくだけでも、いざという時に役立ちます。
 一度、確認しておくと良いかもしれません。

まとめ

 
 初期研修の目標は初期研修を終えること

 異変があるなら休む、なくても休む

 制度として取れる休みを知っておく

 2年間の初期研修さえ終えれば、自分で自分の働き方を選べるようになります。
 医師としての働き方も様々ですので、自分にあったものがある可能性は非常に高いです。

 無理せず、自分のペースで研修していきましょう。

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